ビジネスチャットでの報連相:新社会人のための基本とマナー
ビジネスチャットが報連相の主戦場に?新社会人が押さえるべき基本
近年、多くの企業でビジネスチャットツールが導入され、報連相の主要な手段の一つとなっています。メールよりも手軽で迅速な情報共有が可能ですが、その「気軽さ」ゆえに、対面や電話、メールとは異なる独特のコミュニケーションマナーが存在します。
特に新社会人の皆様は、学生時代のチャットとは勝手が違うビジネスチャットでの報連相に戸惑うことがあるかもしれません。どのような情報を、いつ、誰に、どのように伝えれば良いのか、迷うこともあるでしょう。
この記事では、新社会人の皆様がビジネスチャットを適切に活用し、自信を持って報連相を行うための基本的なマナーと実践方法をステップバイステップで解説します。
ビジネスチャットで報連相を行うメリット・デメリット
ビジネスチャットでの報連相には、いくつかのメリットとデメリットがあります。これらを理解しておくことが、適切にツールを使い分ける第一歩となります。
メリット
- 迅速性: リアルタイムでの情報共有や簡単な確認が素早く行えます。
- 手軽さ: 短文でのやり取りに適しており、かしこまった形式に囚われすぎずに済みます。
- 記録性: やり取りがテキストで残り、後から確認できます(ただし検索性や整理は工夫が必要な場合もあります)。
- 情報共有のしやすさ: グループチャットを使えば、複数人へ同時に情報伝達や確認ができます。
- 相手の時間を奪いにくい: 電話のように相手の手を止めることなく、相手のタイミングで確認してもらえます。
デメリット
- 情報が流れやすい: メッセージが次々と投稿されるため、重要な情報が見落とされたり、過去のやり取りを探しにくくなったりすることがあります。
- 意図やニュアンスが伝わりにくい: 表情や声のトーンが伝わらないため、誤解が生じる可能性があります。
- 緊急度の判断が難しい場合がある: メッセージだけでは、その場で対応が必要なことなのか、後で良いのかが分かりにくいことがあります。
- 公私の区別: プライベートで使い慣れたチャットの感覚で利用すると、マナー違反になる可能性があります。
これらの特性を踏まえ、どのような報連相をチャットで行うのが適切かを見極めることが重要です。
【実践】チャットで報連相する際の基本的なメッセージ作成方法
チャットで報連相を行う際のメッセージ作成には、いくつか押さえておきたい基本ルールがあります。これを守ることで、相手に正確かつ効率的に情報を伝えることができます。
1. 誰への、何の連絡かを明確にする
チャットは多くの人が参加するグループで利用されることも多いため、メッセージの冒頭で「誰に宛てた」「何の用件か」を明確にすることが大切です。
- 宛先: 担当者名やグループ名を明記します(例: @〇〇さん、〇〇チーム各位)。チャットツールのメンション機能を活用すると、相手に通知が届き、見落としを防げます。
- 用件: 挨拶の後に、どのような内容の報連相なのかを簡潔に示します(例: 「〇〇の件のご報告です」「△△についてご連絡いたします」「□□の件でご相談があります」)。件名がないチャットでは、これが「件名」の代わりになります。
2. 結論や最も重要な情報を先に書く
ビジネスチャットでは、メッセージがすぐに流れてしまう可能性があるため、重要な情報や結論を最初に伝えることが推奨されます。
- 例: 「〇〇のタスクが完了いたしました」「△△の会議は予定通り実施いたします」「□□の件で問題が発生しております」
3. 情報を整理し、簡潔に記述する
伝えたい内容は箇条書きや短文で整理し、冗長にならないように心がけます。長い説明が必要な場合は、要約をチャットで伝え、詳細は別途ファイル添付や別の手段(メール、対面など)を提案するのが良いでしょう。
4. 添付ファイルやリンクを添える場合
関連資料がある場合は、必要なファイルを添付したり、参照してほしい資料やページのリンクを貼ったりします。
- 例: 「詳細は添付資料をご確認ください」「〇〇の件、こちらのリンクにまとめました」
5. 適切な挨拶や結びの言葉を使う
チャットであっても、ビジネスコミュニケーションであることを意識し、丁寧な言葉遣いを心がけます。「お世話になっております」「お疲れ様です」といった挨拶や、「ご確認いただけますでしょうか」「よろしくお願いいたします」といった結びの言葉を添えることで、より丁寧な印象を与えられます。
6. 絵文字や顔文字の使用について
ビジネスチャットでの絵文字や顔文字の使用は、社風や相手との関係性によって許容範囲が異なりますが、基本的には避けるのが無難です。特に目上の相手や他部署への連絡では使用しないようにしましょう。親しい同僚など、関係性が構築されてから、社内の慣習に合わせて判断することをお勧めします。
報連相の種類別チャットでの伝え方例
実際の業務シーンを想定し、報連相の種類ごとにチャットでの具体的な伝え方を見てみましょう。
報告をする場合
完了報告や途中報告、問題報告など、状況に応じて伝え方を使い分けます。
【完了報告の例】
- シーン: 依頼されていた資料作成が終わった
- NG例: 「資料できましたー!」(情報不足、丁寧さに欠ける)
-
OK例:
@〇〇さん お疲れ様です。 ご依頼いただいていた〇〇の資料が完成いたしました。 ファイルをご確認いただけますでしょうか。 よろしくお願いいたします。
-
ポイント: 誰からの何の報告か、何が完了したのかを明確に伝えます。
【途中報告の例】
- シーン: 担当しているタスクの進捗を報告する
- NG例: 「今、〇〇やってます」(状況不明確)
- OK例:
@〇〇さん お疲れ様です。〇〇の件について、現在の状況をご報告いたします。 現在、△△の段階まで進んでおり、概ね順調です。 この後、□□の作業を進め、本日中に完了させる予定です。 ご認識いただけますでしょうか。
- ポイント: 現在の進捗状況、今後の予定を具体的に伝えます。
【問題報告の例】
- シーン: 担当業務で予期せぬ問題が発生した
- NG例: 「ヤバいです!〇〇が動かない!」(感情的、情報不足)
- OK例:
@〇〇さん お疲れ様です。△△の件でご報告、ご相談がございます。 現在、〇〇の作業を進めておりますが、□□という問題が発生し、先に進めない状況です。 自分なりに△△を試してみましたが、解決できませんでした。 つきましては、今後の対応についてご指示をいただけますでしょうか。 お手数をおかけいたしますが、ご確認をお願いいたします。
- ポイント: 何の件で、どのような問題が発生したのか、自分はどのような対応をしたのか、そしてどうしてほしいのか(指示を仰ぎたい)を冷静かつ具体的に伝えます。
連絡をする場合
情報共有や周知事項など、正確な情報伝達を心がけます。
【情報共有の例】
- シーン: 会議で決定した事項をチームに共有する
- NG例: 「今日の会議の決定事項です」(内容不明確)
- OK例:
```
〇〇チーム各位
お疲れ様です。本日の会議にて、△△の件について以下のように決定いたしましたので、共有いたします。
- □□を実施する
- 期日は〜までとする
- 担当は〜さん ご認識のほどよろしくお願いいたします。 ```
- ポイント: 何の情報を、誰に共有するのかを明確にし、内容を箇条書きなどで整理します。
相談をする場合
チャットで相談内容を伝える際は、事前に情報を整理し、簡潔に伝える工夫が必要です。込み入った相談は、チャットで概要を伝えた上で、別の手段に切り替える提案も有効です。
【チャットで相談の概要を伝える例】
- シーン: 業務の進め方について上司に相談したい
- NG例: 「今いいですか?相談したいことがあります」(内容不明確、相手の状況が分からない)
- OK例:
@〇〇さん お疲れ様です。△△の件について、ご相談したいことがございます。 チャットで概要をお伝えしてもよろしいでしょうか。または、〇分ほどお時間をいただくことは可能でしょうか。
- ポイント: 何の件で相談したいか伝え、チャットでの相談が可能か、あるいは別の時間をもらえるかを確認します。相手の状況を配慮する姿勢を示します。
【チャットで具体的な相談内容を伝える例】
- シーン: (上記で許可を得た後)具体的な相談内容をチャットで伝える
- OK例:
ありがとうございます。 △△の件についてですが、現在〇〇の段階でして、□□という問題に直面しております。 自分なりに△△の方法を検討したのですが、この方法で進めて良いか判断に迷っております。 つきましては、この方法で進めても問題ないか、あるいは他に良い方法があるかについて、アドバイスをいただけますでしょうか。 よろしくお願いいたします。
- ポイント: どのような状況で、何に困っていて、自分はどう考えているか(解決策案など)を具体的に伝えます。相手に指示やアドバイスを仰ぐ姿勢を明確にします。
チャットでの「読む」「返信する」際のマナー
報連相は「伝える」だけでなく、「受け取る」側としての対応も重要です。
- 確認したことの返信: メッセージを受け取ったら、内容を確認した旨を伝える一言を返信すると丁寧です。「承知いたしました」「確認いたしました」「ありがとうございます」など、状況に応じた返信を心がけます。「了解しました」は目上の方に対しては避けた方が良い場合があります。「承知いたしました」がより丁寧な表現です。
- リアクション機能の活用: チャットツールにある「いいね」や「確認済みのスタンプ」などのリアクション機能は、簡単な確認応答として非常に便利です。ただし、重要な指示や複雑な内容の場合は、テキストでの返信を併用するのが確実です。
- 返信のタイミング: 基本的には、メッセージを確認したら速やかに返信するのが望ましいです。すぐに詳細な返信ができない場合でも、「承知いたしました。〇時までにご回答いたします」「確認します」といった一次返信を入れることで、相手を安心させることができます。緊急度の高いメッセージを見落とさないよう、通知設定なども確認しておきましょう。
- 未読・既読スルーを避ける: 特に自分宛てのメッセージや、自分が関わるグループチャットでの重要なメッセージは、確認したこと、対応状況などを適切に伝えるようにします。
よくある疑問と注意点
- 長文になりそうな場合は? チャットは短文でのやり取りに適しています。伝えたい情報が多い場合や、複雑な内容の場合は、メールや別の資料にまとめ、チャットでは「詳細はメールにてお送りいたしましたので、ご確認をお願いいたします」「〇〇について、△△の資料にまとめました。ご不明な点があればお声がけください」のように、概要と補足資料の案内を伝えます。
- 複数の人に送る場合は? グループチャットを利用する場合、誰に返信や対応を求めているのかを明確にするため、特定の担当者にはメンション(@マークをつけて名前を呼ぶ)を活用します。全体への周知の場合は「〇〇チーム各位」などとします。
- 急ぎの連絡はチャットで良い? 緊急度が高い内容の場合は、チャットだけでなく、状況に応じて電話や対面での報連相を優先することを検討します。チャットで「緊急で恐縮ですが、△△の件で至急ご確認いただけますでしょうか」と送った上で、相手の反応がなければ電話するなど、複数の手段を使い分ける柔軟さも大切です。
まとめ
ビジネスチャットは非常に便利なツールですが、その特性を理解し、適切なマナーで使用することが重要です。
今回ご紹介した基本的なメッセージ作成方法、種類別の伝え方、そして読む・返信する際のマナーを参考に、日々の業務でのチャットコミュニケーションに活かしてみてください。
最初から完璧を目指す必要はありません。少しずつ意識しながら実践を重ねることで、自信を持ってビジネスチャットを使いこなし、スムーズな報連相ができるようになるはずです。