「できません」「難しいです」を適切に伝える報連相:新社会人のための状況説明ステップ
ビジネスシーンでは、上司や先輩、関係部署から様々な依頼を受けることがあります。しかし、時にはその依頼にそのまま応えるのが難しい、あるいは不可能であるという状況に直面することもあります。そのような場合、「できません」「難しいです」と伝えること自体をためらったり、どのように伝えれば良いか迷ったりすることがあるかもしれません。
ただ単に「できません」と伝えるだけでは、依頼した側は何が原因で、どうすれば解決できるのかが分からず困ってしまいます。大切なのは、依頼に応えられない理由を正確に伝え、状況を共有し、必要な代替案や協力できる範囲を示す報連相を行うことです。これは、依頼された業務を適切に進めるためだけでなく、自身の業務状況を周囲と共有し、円滑に仕事を進める上で非常に重要なスキルです。
ここでは、依頼に応えられない場合にどのように報連相を行えば良いか、具体的なステップと会話例を通して解説します。
なぜ「できません」「難しいです」の報連相が重要なのか
依頼されたことに対し、安請け合いしたり、できないまま放置したりすることは、後々大きな問題につながる可能性があります。
- 期日遅延や品質低下: 無理に引き受けてしまい、結果として期日を守れなかったり、品質が低い成果物になったりする。
- 信頼の損失: 依頼された側は「できると思っていたのに」「なぜもっと早く言ってくれなかったのか」と感じ、信頼を失う可能性がある。
- 業務の滞り: 依頼した側は、その業務が滞ることで全体のスケジュールに影響が出る可能性がある。
こうした事態を防ぐため、早めに正確な状況を伝える報連相が必要なのです。これはネガティブな報告ではなく、業務を成功させるための建設的なコミュニケーションであると捉えましょう。
依頼に応えられない場合に報連相するステップ
依頼に応えられない状況になったら、以下のステップで報連相を進めることを検討します。
ステップ1:依頼内容と自身の状況を正確に把握する
まず、依頼された内容を正確に理解できているかを確認します。そして、なぜその依頼に応えるのが難しいのか、具体的な理由を整理します。
- 期日までに完了させるのが難しいのか
- 必要なスキルや知識が足りないのか
- 他の優先度の高い業務で手一杯なのか
- 担当範囲や権限外の依頼なのか
- 必要な情報やツールがないのか
理由を明確にすることで、報連相する内容も具体的にすることができます。
ステップ2:依頼者へ状況を伝えるタイミングを見計らう
依頼に応えるのが難しいと分かったら、できるだけ早いタイミングで伝えることが重要です。悩んでいる時間があれば、すぐに相談することを検討します。
- 依頼を受けた直後、内容を確認してすぐに難しいと判断した場合
- 業務を進める途中で、想定外の課題に直面し難しいと判断した場合
時間を置いてしまうと、対応が手遅れになったり、相手に迷惑をかけたりする可能性が高まります。
ステップ3:依頼に応えられない理由を具体的に伝える
報連相では、「できません」という結論だけでなく、なぜできないのか、何が難しいのかを具体的に伝える必要があります。この際、言い訳のように聞こえないよう、客観的な事実に基づいて説明することを心がけます。
例えば、「忙しいのでできません」だけではなく、「〇〇の業務に△時まで対応しており、その後に取り掛かるとなると、ご依頼いただいた件の期日である本日中に完了するのが難しい状況です」のように具体的に伝えます。
ステップ4:代替案や協力できる範囲を示す
単にできない理由を伝えるだけでなく、どのようにすれば依頼された業務を進められるか、代替案や協力できる範囲を提案することが建設的な報連相です。
- 期日を調整してもらうことは可能か
- 他の人に協力を仰ぐことは可能か
- 依頼の一部だけなら対応可能か
- 必要な情報やツールを提供してもらえれば可能か
具体的な解決策や代替案を示すことで、依頼者も次の手を考えやすくなります。
ステップ5:確認と次のアクションを確認する
報連相の締めくくりとして、伝えた内容が正しく理解されたかを確認し、今後の進め方について依頼者と認識を合わせます。
- 「このような状況なのですが、どのように進めるのがよろしいでしょうか。」
- 「私が対応できるのはここまでなのですが、残りの部分はどのようにいたしましょうか。」
のように、相手に判断を委ねたり、指示を仰いだりする形で締めくくることが適切です。
具体的な会話例
様々な状況における会話例を見てみましょう。
例1:期日までに完了するのが難しい場合
- 状況: 明日午前中までの資料作成を依頼されたが、別の急ぎの対応があり、どう考えても間に合わない。
- 報連相:
- 自分: 「〇〇部長、先ほどご依頼いただいた△△に関する資料作成の件でご相談がございます。」
- 上司: 「はい、どうしましたか。」
- 自分: 「ありがとうございます。資料の作成は開始いたしました。ただ、本日中に対応が必要な□□の件に現在取り掛かっておりまして、そちらの完了が早くても本日の退勤間際になりそうです。そのため、△△の資料を明日午前中までに仕上げるのが、現在の業務状況ですと大変厳しいと考えております。」
- 上司: 「なるほど。他に手伝ってもらえる人はいますか。」
- 自分: 「現在のところ、他のメンバーも各自の業務で手一杯のようです。つきましては、△△の資料の期日を調整いただくことは可能でしょうか。例えば、明日の午後であれば、確実に完了できる見込みです。」
- 上司: 「分かりました。では、明日の午後提出で構いません。無理のない範囲で進めてください。」
- 自分: 「承知いたしました。ありがとうございます。明日の午後には必ず提出できるよう努めます。」
例2:やり方が分からない/スキルが足りない場合
- 状況: これまで経験のない複雑なツールの操作を含む作業を依頼された。自分で調べても難しい。
- 報連相:
- 自分: 「〇〇さん、先ほど依頼いただいた△△のデータ分析の件でご相談がございます。」
- 先輩: 「はい、何でしょうか。」
- 自分: 「ありがとうございます。データ分析自体は進められますが、ご指示いただいた分析手法に使うツール(例:Pythonの特定のライブラリなど)の経験がなく、調べながら進めておりますが、想定以上に時間がかかっております。このままですと、期日までに分析を完了させるのが難しい状況です。」
- 先輩: 「そうですか。具体的にどこが分からないですか。」
- 自分: 「はい、特にデータの整形部分でエラーが出てしまい、先に進めない状態です。もしよろしければ、ツールの基本的な操作方法や、データの整形について、少しご教示いただくお時間はございますでしょうか。または、この部分だけ△△さんにお願いすることは可能でしょうか。」
- 先輩: 「なるほど、分かりました。少し時間を取れるので、一緒にエラーを見てみましょう。その後、難しければ対応を分担することも考えましょう。」
- 自分: 「大変助かります。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
よくある間違いと注意点
依頼に応えられない報連相を行う際に、新社会人がやりがちな間違いと、それに伴う注意点です。
- 「できません」だけで終わらせる: 理由や代替案、協力できる範囲などを添えないと、無責任な印象を与えかねません。
- 注意: 必ず理由と、どうすれば可能になるか(またはどの範囲なら可能か)をセットで伝えましょう。
- 言い訳のように聞こえてしまう: 事実に基づいて説明するのではなく、自己弁護のように聞こえてしまうことがあります。「〜でしたので」「〜だったので」といった後付けの説明が多くなると、言い訳に聞こえやすくなります。
- 注意: 現在の状況と、それによって依頼が難しい理由を簡潔に客観的に伝えます。感情的にならず、落ち着いて話しましょう。
- 伝えるのが遅すぎる: 難しいと感じたら、すぐに報連相することが鉄則です。悩んでいるうちに時間が過ぎてしまい、手遅れになることがあります。
- 注意: 少しでも難しい、不安だと感じたら、すぐに上司や依頼者に相談する習慣をつけましょう。
- 勝手に諦めてしまう: 報連相せず、自分で「無理だ」と判断して作業をストップしたり、中途半端に進めたりすることは避けましょう。
- 注意: 自分で判断せず、必ず状況を報連相し、指示を仰ぎましょう。
- 過度に謝罪する: 依頼に応えられないことに対して謝罪の気持ちを持つことは大切ですが、「申し訳ありません」を連発しすぎると、自信がないように見えたり、かえって相手に負担を感じさせたりすることがあります。
- 注意: 必要最低限の謝罪と共に、前向きな解決策の相談に重点を置きましょう。
まとめ
依頼された業務にそのまま応じることが難しい場合の報連相は、決してネガティブなものではありません。自身の業務状況を正確に伝え、課題を共有し、解決策を共に考えるための建設的なコミュニケーションです。
「できません」「難しいです」と伝える際は、
- 依頼内容と自身の状況を正確に把握する。
- できるだけ早く伝える。
- 理由を具体的に、客観的に伝える。
- 代替案や協力できる範囲を示す。
- 今後の進め方を確認する。
これらのステップを意識することで、依頼した側も状況を理解しやすくなり、最適な解決策を見つけやすくなります。また、自身の業務負担を適切に管理し、期日や品質を守るためにも不可欠な報連相です。
最初は伝え方に迷うこともあるかもしれませんが、経験を積むことでスムーズに行えるようになります。恐れず、誠実に状況を伝える練習を積み重ねていきましょう。