失敗しない報連相のために:新社会人が押さえるべき事前確認ポイント
新社会人として働き始めると、「報連相(報告・連絡・相談)」の重要性を実感する機会が多くあるでしょう。しかし、いざ実践しようとすると、「何を伝えればいいのだろう」「どう聞かれるか不安だ」と感じることもあるかもしれません。
報連相の質を高め、スムーズに進めるためには、相手に伝える前に少し立ち止まって確認・準備することが非常に有効です。この事前確認を習慣にすることで、情報不足による手戻りを減らし、自信を持って報連相に臨めるようになります。
ここでは、新社会人が報連相を行う前に押さえておきたい、具体的な事前確認のポイントをステップ形式で解説します。
ステップ1:報連相の「目的」を明確にする
まず最初に考えるべきは、「何のために今回の報連相を行うのか」という目的です。目的によって、伝えるべき内容や情報の整理の仕方が変わってきます。
- 報告:
- 何について完了したのか、または現在の状況はどうなのかを伝える。
- 相手に状況を把握してもらい、次の指示や判断を仰ぐため。
- 連絡:
- 関係者間で情報を共有する。
- 決定事項や変更点、発生した事実などを正確に伝えるため。
- 相談:
- 自分だけでは判断できないこと、困っていることについて、相手に意見や助けを求める。
- 問題を解決したり、より良い進め方を見つけたりするため。
目的が曖昧なまま話し始めると、話がまとまらず、相手にも意図が伝わりにくくなります。
例: * 目的: 上司に進捗を報告し、この後の進め方について指示をもらいたい。 * 目的: 関係部署に今日の会議時間の変更を連絡したい。 * 目的: 担当業務でエラーが発生したので、対処法について先輩に相談したい。
このように、報連相の目的を最初に自分の中で明確にしておきましょう。
ステップ2:伝えるべき「情報」を整理する
次に、目的を達成するために必要な情報を集め、整理します。特に報告や相談では、正確な情報伝達が不可欠です。
- 事実と意見を分ける: 実際に起こったこと(事実)と、自分が考えたり感じたりしていること(意見や推測)を区別して整理します。
- 事実:「〇〇のシステムでエラーが発生しました。」
- 意見:「おそらく△△が原因ではないかと思います。」 事実に基づいて話すことで、情報の信頼性が高まります。
- 関連情報を集める: 報告や相談に関連する資料、データ、経緯などを手元に準備します。
- 例えば、システムエラーならエラーメッセージ、発生日時、試したことなど。
- 相談であれば、これまでの進捗、試した方法、何に困っているのかなど。
- 要点を絞る: 伝えたいことを簡潔にまとめます。長すぎると相手が理解しにくくなることがあります。箇条書きなどで整理するのも有効です。
会話例(相談の準備として):
「(〇〇の件で相談したい。現状は△△まで進んだが、□□の部分で詰まっている。具体的にはエラーコードXXXが出て、AとBの方法を試したが改善しない。インターネットで調べた情報ではCという対処法があるらしいが、試して良いか判断できない状況。先輩に、このエラーの対処法についてアドバイスをいただきたい。)よし、要点は『〇〇の件、現状、問題点、試したこと、相談内容』だな。」
このように、頭の中で整理するだけでなく、必要であればメモに書き出すこともおすすめです。
ステップ3:相手を「想定」する
報連相の相手が誰かを意識することで、伝え方や準備すべき内容が変わります。
- 相手の状況を考える: 相手は今忙しいか、会議中か、移動中かなどを考慮します。忙しい相手には、結論から簡潔に伝える準備が必要です。
- 相手の立場を考える: 上司なのか、先輩なのか、他部署の担当者なのかによって、求める情報や判断基準が異なる場合があります。
- 上司:全体の進捗や判断材料となる情報を求めることが多い。
- 先輩:具体的な作業手順や技術的なアドバイスを求めることが多い。
- 他部署:関連する進捗や連携に必要な情報を求めることが多い。
- 相手が知りたい情報は何か予測する: 自分の視点だけでなく、相手がこの報連相によって何を知りたいか、何を判断したいかを予測します。それに応じた情報を提供できるように準備します。
会話例(上司への報告を想定して):
「(上司は今、他の会議が入る前に少し時間がありそうだ。この件について、全体の進捗と、次のステップに進む上での課題を簡潔に知りたいはずだ。詳細なデータは後で送るとして、まずは現状と課題、そして次にどうしたいかをまとめて伝えよう。)」
相手への配慮は、報連相をスムーズに進める上で非常に重要です。
ステップ4:伝える「内容」を構成する
整理した情報をどのように伝えるか、順序を考えます。ビジネスシーンでは、一般的に「結論から話す」ことが推奨されます。
- 結論・要件を先に伝える: まず、最も伝えたいことや、相手にお願いしたいことを最初に述べます。
- 「〇〇の件について、完了のご報告です。」
- 「△△について、ご相談したいことがあります。」
- 「本日の会議時間が□□に変更になりましたのでご連絡します。」
- 結論の理由や詳細を説明する: その後、結論に至った経緯や、具体的な状況、データなどを説明します。
- 次にどうするか、またはどうしてほしいかを伝える: 報告なら「次は〜を進めます」、相談なら「〜についてアドバイスいただけますでしょうか」のように、今後の行動や相手への要望を明確に伝えます。
この構成を事前に考えておくことで、話が脱線せず、論理的に伝わります。
会話例(構成を考える):
「(まず『結論』:〇〇の作業が終わりました。次に『詳細』:具体的には△△まで完了し、品質チェックもパスしました。最後に『今後』:次のステップである□□の作業に取り掛かります。これで上司に報告しよう。)」
ステップ5:想定される「質問」を考える
報連相の後、相手から質問されることを予測し、回答を準備しておくと安心です。特に相談では、相手が状況を正確に把握するために様々な質問が来る可能性があります。
- どのような情報が不足しているか考える: 自分が伝えた内容で、相手が疑問に思うかもしれない点、さらに詳しく知りたいと思う点を予測します。
- 「なぜ」「どのように」といった質問を予測する: その結論になった理由、その行動をとった経緯などを聞かれることを想定します。
- 回答を用意する: 想定される質問に対する答えを事前に考え、必要な情報やデータを確認しておきます。
会話例(相談の準備として):
「(このエラーについて相談するとして、上司からは『いつから発生しているか』『他の人でも起きているか』『自分でどこまで調べたか』『マニュアルは確認したか』といったことを聞かれそうだ。これらの情報もすぐに答えられるように準備しておこう。)」
事前に質問を想定しておくことで、報連相の場で焦らずに対応でき、よりスムーズなコミュニケーションにつながります。
事前準備は報連相の「質」を高める
ここまでに挙げた5つのステップを、報連相を行う前の確認事項として取り入れてみてください。
- 報連相の目的を明確にする
- 伝えるべき情報を整理する(事実と意見を分ける)
- 相手(誰に、どんな状況で)を想定する
- 伝える内容を構成する(結論から話す)
- 想定される質問を考える
もちろん、全ての報連相で完璧な準備が必要なわけではありません。簡単な連絡であれば、目的と要点を押さえるだけで十分な場合もあります。重要な報告や複雑な相談、判断を仰ぐ必要がある場合ほど、入念な事前準備が役立ちます。
慣れないうちは時間がかかるように感じるかもしれませんが、この事前確認の習慣がつくことで、報連相が格段にスムーズになり、あなたの信頼性も高まります。
報連相は経験を積むことで必ず上達します。焦らず、一つ一つの報連相の前に少し立ち止まって確認する習慣をつけていきましょう。