これで「言った」「言わない」を防ぐ!新社会人のための報連相記録・確認ステップ
はじめに:「言った」「言わない」トラブルを防ぐために
新社会人の時期は、新しい情報や指示を吸収することで精一杯になることがあります。その中で、「言ったはずなのに伝わっていなかった」「言われたことと違う認識で進めてしまった」といった「言った」「言わない」に起因するトラブルを経験する場合があります。これは、報連相が「伝えた」で完結してしまい、「伝わった」ことを確認するステップが抜けているために起こることが多いです。
報連相は、情報を単に伝えるだけでなく、相手に正確に理解してもらい、共有された認識のもとで業務を進めることが目的です。特に重要な指示や決定事項については、後々の誤解を防ぐために「記録」を残し、「確認」を取ることが非常に大切になります。
この記事では、新社会人が「言った」「言わない」トラブルを未然に防ぎ、自信を持って業務に取り組めるようになるための、報連相の記録と確認の具体的なステップを解説します。
報連相における記録と確認の重要性
報連相の記録と確認は、以下の点で重要です。
- 正確性の確保: 相手からの指示や伝達事項を正確に把握し、認識のずれがないかを確認できます。
- 証跡(エビデンス): 後日、内容について確認が必要になった際に、客観的な根拠となります。「いつ」「誰が」「何を」伝えたかが明確になります。
- 記憶の補完: 人間の記憶は曖昧になることがあります。記録があれば、後から内容を正確に思い出すことができます。
- 情報の共有: 記録を関係者と共有することで、複数人での認識を一致させることができます。
これらの重要性を理解した上で、具体的なステップを見ていきましょう。
ステップ1:報連相の内容を「その場」で確認する(口頭での復唱、要点の確認)
報連相の多くは、まず口頭で行われます。指示を受けたり、何かを伝えたりした直後に、その内容を改めて確認することが第一のステップです。
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指示や依頼を受けた場合: 相手の言葉を聞き終わったら、自分が理解した内容を簡単に復唱して確認します。「〇〇の件ですね」「〇〇を〇〇までに」「〇〇さんへ報告」といった、指示の 핵심 (ヘクシム、核心)となる部分を繰り返すことで、認識にずれがないか確認できます。
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会話例: 上司:「Aさん、この資料をコピーして、今日の会議で使う人数分、15部用意しておいてください。会議は14時からです。」 あなた:「はい、承知いたしました。この資料をコピーして、14時からの会議で使う15部を用意する、ということでよろしいでしょうか。」 上司:「はい、お願いします。」
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ポイント: 相手が「はい」「そうです」と肯定すれば、少なくともその時点での認識は一致しています。もし違えば、その場で訂正してもらえます。
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自分が何かを報告・連絡・相談した場合: 話を終えた後、相手が内容を理解したか、次に何をするかについて確認します。「この件、〇〇さんにご確認いただけますでしょうか」「今後の進め方について、ご指示いただけますでしょうか」など、相手に具体的なアクションや判断を促す形で締めくくることも有効です。
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会話例: あなた:「〇〇の件でご報告です。現在、△△の段階まで進んでおり、□□の状況です。」 上司:「なるほど、状況は理解しました。」 あなた:「ありがとうございます。今後の進め方について、このまま進めて問題ないか、あるいは何か考慮すべき点があるか、ご確認いただけますでしょうか。」 上司:「状況は把握できたので、このまま進めてください。」
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ポイント: 報告・連絡・相談の「目的」が達成されたか(相手に状況が伝わったか、判断を仰げたかなど)を確認します。
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ステップ2:報連相の内容を「記録」に残す(メモ、チャット、メール)
口頭での確認に加え、内容を「形に残す」ことが重要です。状況や内容の重要度に応じて、適切なツールを使って記録を残します。
- 簡単なメモ: 急ぎの指示や、後で詳細を確認するためのキーワードなどを手元に残す場合に使います。殴り書きで構いませんが、後から自分が見て理解できるように書きます。
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チャットツール: 比較的カジュアルで、すぐに共有・確認を取りたい場合に有効です。簡単な指示の確認や、進捗の共有などに使われます。グループチャットを使えば関係者全員で情報を共有できます。
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チャット文例(指示確認): [〇〇さん(上司や担当者名)] 先ほどの〇〇の件、承知いたしました。 要点として、 ・期日:〇月〇日 〇時 ・内容:△△資料の作成 ・提出先:□□さん で合っていますでしょうか。 ご確認いただけますと幸いです。
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チャット文例(報告): [共有用グループなど] 皆様 〇〇プロジェクトの△△部分について、本日の午前中に□□まで完了いたしました。 次のステップである××に進めます。 ご認識のほどよろしくお願いいたします。
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メール: フォーマルな記録として残したい場合、関係者が多い場合、情報量が多い場合などに使います。決定事項、議事録、正式な依頼内容などを記録するのに適しています。
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メール文例(打ち合わせ議事録送付): 件名:〇〇プロジェクト 進捗打ち合わせ議事録(〇月〇日)
〇〇様 △△様
お疲れ様です。 〇〇部の[あなたの名前]です。
本日の〇〇プロジェクト進捗打ち合わせにご参加いただき、誠にありがとうございました。 議事録を作成いたしましたので、ご確認をお願いいたします。
もし認識違いや修正点などございましたら、お手数ですが[期日:例. 〇月〇日 〇時]までにご連絡いただけますと幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
[あなたの署名]
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ポイント: 誰に、いつ、何を伝えたか(あるいは伝えられたか)が明確になるように記録します。特にチャットやメールは、送受信の記録がシステム上に残るため、有力な証拠となります。
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ステップ3:記録を「共有・確認」してもらう
記録した内容を、必要に応じて相手や関係者と共有し、内容に誤りがないか確認してもらいます。
- チャットでの確認: ステップ2のチャット文例のように、「〜で合っていますでしょうか」「ご確認いただけますでしょうか」といった一文を添えて送信します。相手からの「はい、合っています」「確認しました」といった返信があれば、認識が一致した証拠になります。
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メールでの確認: ステップ2のメール文例のように、本文中で確認を依頼します。「ご確認いただけますでしょうか」「もし相違点がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです」といった言葉を添えます。相手からの返信がなくても、期日までに指摘がなければ「合意された」とみなすケースが多いですが、重要な事項については返信を求めるか、改めて口頭で「先日メールで送付した件、ご確認いただけましたでしょうか」と確認することも大切です。
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会話例(メール送付後の確認): あなた:「〇〇さん、先日メールで送付させていただいた〇〇の件、ご確認いただけましたでしょうか。」 上司:「ああ、見たよ。それで問題ないです。」 あなた:「ありがとうございます。承知いたしました。」
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ポイント: 記録を一方的に送るだけでなく、相手に目を通してもらい、認識を一致させるプロセスが重要です。確認してもらう期日を設定することも有効です。
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よくある疑問とその対応
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どんな報連相を記録すべきか? すべての報連相を網羅的に記録するのは現実的ではありません。以下のような内容は、特に記録と確認を徹底することをおすすめします。
- 指示、依頼の内容、期日
- 重要な決定事項
- 変更点、修正指示
- トラブルや問題の状況と対応策
- 関係者との合意事項
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記録に残すほどのことか迷う場合は? 判断に迷う場合は、まずは簡単なメモでも構わないので記録に残しておきましょう。後から見返して、「これは残しておいてよかった」「これはそこまで重要ではなかったな」といった判断ができるようになります。慣れるまでは、少し多めに記録するくらいの意識でいると安心です。
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相手が忙しそうで確認を頼みにくい場合は? 相手の状況を考慮しつつ、工夫して確認をお願いします。
- 「お忙しいところ大変恐縮ですが、一点ご確認いただけますでしょうか」など、相手への配慮を示す言葉を添える。
- チャットなど、相手が都合の良い時に確認できるツールを使う。
- 「本日の終業時間までにご確認いただけると助かります」など、具体的な期日を示すことで、相手も対応の優先順位をつけやすくなる場合があります。
- 本当に急ぎでない場合は、相手の手が空きそうなタイミングを見計らう。
まとめ:記録と確認で報連相の質を高める
報連相における「言った」「言わない」トラブルは、新社会人にとって大きな不安要素となり得ます。しかし、報連相の内容をその場で確認し、適切な方法で記録に残し、そして関係者と共有・確認するというステップを丁寧に行うことで、これらのトラブルを効果的に防ぐことができます。
最初は少し手間に感じるかもしれませんが、記録と確認を習慣化することで、正確に情報が伝わる安心感が得られ、自信を持って業務に取り組めるようになります。また、正確な記録は自身の成長の記録にもなり、後々役立つ場面も多くあります。
ぜひ今日から、受けた指示や伝えた内容を「記録して確認する」意識を持って、報連相に取り組んでみてください。