正確な情報伝達のために:新社会人の事実と意見を分ける報連相
報連相の質を高める「事実」と「意見」の区別
報連相は、業務を円滑に進め、チーム全体の状況を共有するために不可欠なビジネススキルです。特に新社会人の皆様にとっては、上司や先輩、関係部署へ正確な情報を伝えることが信頼構築の第一歩となります。そのために重要なのが、「事実」と「意見」を明確に区別して伝えることです。
事実と意見が混ざった報連相は、聞き手に誤解を与えたり、状況判断を難しくさせたりする可能性があります。ここでは、事実と意見を区別することの重要性と、具体的な伝え方のステップを解説します。
なぜ事実と意見の区別が重要なのか
報連相において事実と意見を分けることには、いくつかの重要な理由があります。
- 情報の正確性: 事実を正確に伝えることで、聞き手は現在の状況を正しく把握できます。
- 判断の支援: 聞き手は提示された事実に基づき、より適切な判断を下すことができます。意見はあくまで参考情報として扱われます。
- 誤解の防止: 事実でない推測や感想を事実のように伝えてしまうと、間違った情報が広がり、業務に支障をきたす可能性があります。
- 信頼の構築: 客観的な事実と自身の考え(意見)を分けて伝えられる人は、論理的に物事を考えられるという印象を与え、信頼を得やすくなります。
「事実」と「意見」とは?
まず、報連相における「事実」と「意見」がそれぞれ何を指すのかを理解しましょう。
事実(Fact): 実際に起きたこと、誰が見ても変わらない客観的な情報、データに基づいた情報など、証明が可能な事柄です。 * 例:「〇〇プロジェクトの進捗率は50%です。」 * 例:「A社からの回答期日は明日です。」 * 例:「お客様から△△機能に関する問い合わせが3件来ています。」
意見(Opinion): 個人的な考え、判断、推測、感想、要望、提案など、主観的な事柄です。同じ事実を見ても、人によって異なる場合があります。 * 例:「このペースだと、〇〇プロジェクトの納期に間に合わない可能性があります。」 * 例:「A社は慎重に検討しているようです。」 * 例:「△△機能は改善が必要だと考えます。」
事実と意見を区別して伝えるステップ
報連相の場面で、事実と意見を区別して伝えるための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:伝えるべき情報を整理する
報連相を行う前に、伝えるべき内容を頭の中で整理するか、メモに書き出してみましょう。その際、それぞれの情報が「事実」なのか「意見」なのかを意識して分けます。
例えば、担当している業務で遅延が発生しそうな状況を報告する場合:
- 事実:
- 担当業務:〇〇プロジェクトの資料作成
- 当初の完了予定日:本日18時
- 現在の状況:全体の7割が完了
- 残りの作業量:図の作成、データ入力、見直し
- 新たな状況:想定外のデータ収集に時間がかかっている(具体的な時間、原因などあれば追記)
- 意見:
- このペースだと今日の完了は難しい
- 明日午前中には完了できる見込み
- 〇〇部署にデータ収集の協力を仰げれば早く進むかもしれない
- 納期遅延について、どのように対応すべきか指示を仰ぎたい
このように整理することで、自分が何を伝えるべきか、そしてそれが事実か意見かを明確にできます。
ステップ2:事実から先に、具体的に伝える
報連相をする際は、まず客観的な「事実」から先に伝えるようにします。これにより、聞き手は状況を正確に把握できます。事実はできるだけ具体的に、数字や固有名詞を用いて伝えましょう。
悪い例: 「〇〇の件なんですけど、ちょっと間に合わなさそうです。データ集めに手間取ってて…どうしたらいいですか?」 (何が、どのくらい遅れる可能性があるのか、具体的な状況が不明確)
良い例: 「現在担当している〇〇プロジェクトの資料作成の件でご報告いたします。当初本日18時完了予定でしたが、必要なデータの一部収集に想定より時間がかかっており、現在7割ほどの進捗となっております。」 (何の、どの業務の、当初の予定、現在の状況、遅れの具体的な原因が明確)
ステップ3:意見や推測を明確に伝わる言葉を選ぶ
事実を伝えた後、自身の「意見」や「推測」「懸念点」「要望」などを伝えます。この際、「これは自分の考えや推測である」ということが聞き手に明確に伝わるような言葉を選びます。
事実だけを伝えた後: 「このままですと、本日中の完了は難しい状況です。」(事実に基づく推測)
意見や見通しを加える: 「このままですと、本日中の完了は難しい状況です。明日午前中には完了できる見込みですが、〇〇部署に△△データの協力を仰げれば、本日中に完了できる可能性もあると考えております。」
懸念点を伝える: 「現状、データ収集が難航しておりますので、今後の工程に影響が出る可能性を懸念しております。」
指示を仰ぐ場合: 「この件について、今後の進め方についてご指示いただけますでしょうか。」
このように、「〜と思います」「〜と考えます」「〜懸念しております」「〜していただけると助かります」といったクッション言葉や意見であることを示すフレーズを使うことで、事実と意見を区別できます。
ステップ4:報連相の形にまとめる
整理した情報と伝え方のステップを踏まえて、実際に話す内容や書く文章を組み立てます。
会話例:上司への進捗遅延の報告
「お忙しいところ失礼いたします。〇〇プロジェクトの資料作成の進捗についてご報告がございます。」(導入、相手への配慮)
「当初本日18時完了予定で進めておりましたが、必要なデータ収集に想定より時間がかかっておりまして、現在7割ほどの進捗となっております。」(事実)
「このままですと、本日中の完了は難しい状況です。明日午前中には完了できる見込みですが、もし本日中に完了する必要があるようでしたら、〇〇部署の△△さんにデータ収集のご協力をお願いできないか検討したいと考えております。この件について、今後の進め方についてご指示いただけますでしょうか。」(事実に基づく推測、意見・提案、相談・依頼)
報連相でよくある間違いと対策
新社会人が事実と意見の区別でやりがちな間違いと、その対策をご紹介します。
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間違い1:主観的な感想や推測を事実のように話してしまう
- 例:「このお客様はたぶん契約しないと思います。」
- 対策: 「〜と思います」「〜感じました」など、あくまで自分の意見・感想であることを明確に伝える。「〜と思います。理由は、商談中の反応が薄く、価格についても難色を示されていたためです。」のように、その意見に至った根拠となる事実を添えると、より説得力が増します。
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間違い2:原因を断定してしまう(事実ではない可能性)
- 例:「システムダウンの原因は〇〇さんの操作ミスです。」
- 対策: 原因が確定していない場合は、「〜の状況が発生しております。原因については現在調査中ですが、△△の可能性が高いと考えております。」のように、事実(発生状況)と意見(原因の推測)を分けて伝え、断定を避けます。
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間違い3:結論(意見)だけを先に伝えてしまう
- 例:「この企画は難しいと思います。」
- 対策: まず「なぜそう思うのか」という根拠となる事実や状況を伝えます。「〇〇企画の件ですが、必要な人材を確保できない状況であり、また予算も不足しております(事実)。これらの状況から、現在のリソースでは実行が難しいと考えております(意見)。」のように、事実を先に述べてから結論や意見を伝えると、聞き手は状況を理解しやすくなります。
まとめ
報連相で「事実」と「意見」を区別することは、正確な情報伝達の基礎であり、ビジネスにおける信頼関係を築く上で非常に重要です。常に「今伝えようとしている情報は、客観的な事実だろうか、それとも自分の考えや感想だろうか」と自問する習慣をつけましょう。そして、事実から先に伝え、意見を述べる際はそれが意見であることを明確に示す言葉を選んでください。
繰り返し実践することで、自然と事実と意見を整理して伝えられるようになります。正確な報連相を心がけ、自信を持って業務に取り組んでいきましょう。