担当外の「伝言」「代理」どう伝える?新社会人のための報連相ステップ
はじめに
入社して間もない頃、自分の担当ではないことについて、社内外の人から質問を受けたり、他の人への伝言を頼まれたりすることがあります。
「これは誰に聞けばいいのだろう」「安請け合いしても大丈夫だろうか」「どう伝えたら失礼にならないだろうか」など、どのように対応すればよいか迷うこともあるかもしれません。担当外のことだからといって安易に対応したり、逆に何もせずに放置したりすると、後々トラブルになる可能性もあります。
このような「担当外のこと」に関する報連相は、一見難しく感じられるかもしれませんが、いくつかの基本的なステップを押さえれば、スムーズかつ適切に対応できるようになります。この記事では、新社会人が自信を持って担当外の報連相ができるようになるための、具体的なステップと会話例をご紹介します。
なぜ担当外のことでも報連相が必要なのか
自分が担当していないタスクや情報であっても、それに関わる報連相を適切に行うことは、いくつかの重要な意味を持ちます。
- 情報の正確な伝達: 誤った情報を伝えたり、情報が途中で滞ったりすることを防ぎ、関係者間の誤解や混乱を避けることができます。
- 担当者へのスムーズな引き継ぎ: 担当者が誰であるかを明確にし、必要な情報を漏れなく伝えることで、相手がすぐに状況を把握し、対応を始めることができます。
- 自分の状況の共有: 自分がその件の担当者ではないことを明確に伝えることで、不要な誤解を防ぎ、自身の責任範囲を明確にできます。
- 組織全体の連携強化: 一人ひとりが適切な情報共有を心がけることで、チームや部署間の連携が円滑になり、業務全体の効率向上につながります。
担当外の件であっても、「自分には関係ない」と考えるのではなく、「組織の一員として、情報のハブとなり、円滑な業務遂行に貢献する機会」と捉えることが大切です。
ステップ1:状況を正確に把握する
担当外の件で何か依頼されたり質問を受けたりしたら、まずは慌てずに状況を正確に把握することから始めます。
- 何を頼まれたか/聞かれたか?
- (例)Aさんへの伝言を頼まれた
- (例)〇〇プロジェクトの進捗について聞かれた
- (例)△△に関する資料を渡されたので、担当者に渡してほしいと頼まれた
- (例)社外のお客様から、〇〇の件で連絡が来た
- 誰から依頼/質問されたか?
- 社内の人(上司、先輩、他の部署の人)か、社外の人(お客様、取引先)か。
- 誰へ/誰についての内容か?
- 誰への伝言か、誰に関する質問か、誰に渡す資料かなどを明確にします。多くの場合、その件の「担当者」がいるはずです。
- 依頼/質問の内容は何か?
- 具体的にどのような情報や対応が求められているのか、その緊急度や重要度はどのくらいか。不明な点があれば、必ずその場で確認します。
- 自分の状況
- 自分がその件の担当者ではないことを認識します。現時点で自分に分かること、分からないことを整理します。
正確な把握のための会話例
依頼者:「Aさんにこの資料を渡して、今日の会議に間に合うか確認してほしいんだけど。」
自分:「はい、承知いたしました。この資料ですね。Aさんに渡して、今日の会議への準備状況を確認する、ということでよろしいでしょうか?差し支えなければ、会議の時間は何時でしょうか。」(依頼内容の復唱と補足確認)
質問者:「そちらの〇〇サービスについてお伺いしたいのですが。」
自分:「お問い合わせありがとうございます。〇〇サービスについてですね。恐れ入ります、私が担当しておらず、詳しい情報が手元にございません。担当の△△に代わってご説明させていただきますので、少々お待ちいただけますでしょうか。」(担当外であること、担当者への引き継ぎ意向を伝える)
ステップ2:対応方針を判断する
状況を把握したら、次にどのように対応するかを判断します。
- 自分で対応できるか?
- 単に資料を渡すだけ、指定された場所に保管するだけなど、内容が明確で、自分にその権限と情報があり、かつ依頼者の指示が明確な場合、自分で対応できる可能性があります。
- ただし、自己判断せず、念のため依頼者や担当者に「このまま私が〇〇します」と確認する方が安全です。
- 担当者への引き継ぎや確認が必要か?
- 内容について自分に知識がない、判断が必要、担当者以外が対応すべきでない、といった場合は、必ず担当者や関係部署へ引き継ぎ、確認を依頼する必要があります。多くの場合、このケースに該当します。
ステップ3:関係者へ報連相する
対応方針が決まったら、関係者へ速やかに報連相を行います。特に「担当者への引き継ぎや確認が必要な場合」について、具体的な報連相方法を説明します。
パターンA:担当者への引き継ぎ・確認を依頼する場合
依頼された内容を、適切な担当者へ正確に伝達し、対応を依頼します。
誰に伝えるか
- 担当者本人: 最も直接的で、多くの場合最初に連絡すべき相手です。
- 担当者の上司/チームリーダー: 担当者が不在の場合や、担当者本人に直接連絡しにくい場合、また複数の担当者が関わるような内容の場合は、上司やリーダーに相談し、指示を仰ぎます。
- 依頼者: 担当者に引き継ぐこと、今後の対応について、依頼者に報告します。
どう伝えるか(会話例)
伝え方には、口頭、チャット、メールなど、状況に応じた適切な手段を選びます。緊急度が高い場合は口頭やチャットで、記録を残す必要がある場合はメールが適しています。
口頭/チャットでの会話例(担当者へ)
自分:「〇〇さん、恐れ入ります。先ほど、△△様から××の件でご質問がありまして。私が担当ではないため、〇〇さんにご対応をお願いしてもよろしいでしょうか。△△様は〇〇におります。」
担当者:「はい、承知しました。ありがとうございます。△△様に連絡してみます。」
自分:「ありがとうございます。助かります。」
メールでの会話例(担当者へ)
件名:△△様から××に関するお問い合わせの件(担当:〇〇様)
〇〇様
お疲れ様です。(自分の名前)です。
先ほど、社外の△△様より、××の件についてお問い合わせをいただきました。
大変恐縮ながら、私が当該件の担当ではございませんので、〇〇様にご対応をお願いしたく、ご連絡差し上げました。
△△様は、〜(お問い合わせ内容の詳細、緊急度、連絡先など、把握している情報を簡潔に記載)〜とおっしゃっていました。
お忙しいところ申し訳ございませんが、ご確認いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
(自分の名前)
口頭/チャットでの会話例(依頼者へ)
自分:「〇〇様、先ほどご依頼いただいた件ですが、担当の△△さんに引き継ぎました。△△さんから改めてご連絡させていただくかと思います。」
依頼者:「分かりました、ありがとう。」
パターンB:質問者/依頼者への返答
担当者への引き継ぎや確認状況を、質問者や依頼者へ適切に伝えます。自分で対応できない場合、安易に「分かりません」で終わらせず、次に誰がどう対応するかを示すことが重要です。
どう伝えるか(会話例)
自分で対応できないことを伝え、担当者へ引き継ぐ場合
相手:「〇〇サービスの仕様について教えてください。」
自分:「お問い合わせありがとうございます。〇〇サービスの件ですね。恐れ入ります、私が担当しておらず、詳細については分かりかねます。担当の△△に代わってご説明させていただきますので、少々お待ちいただけますでしょうか。△△は現在席を外しておりますので、戻り次第、改めてご連絡させていただきます。お急ぎの場合は、△△の携帯番号(分かれば伝える)にご連絡いただくことも可能です。」
相手:「そうですか、では△△さんから連絡をお願いします。」
自分:「承知いたしました。担当の△△に申し伝えます。お待たせして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。」
簡単な依頼で、担当者に確認した上で自分で対応する場合
依頼者:「この資料をAさんに渡しておいてくれる?」
自分:「はい、承知いたしました。Aさんに渡しておきます。(担当の)〇〇さんに確認したところ、すぐに渡してほしいとのことでしたので、このまま私が対応させていただきます。」
依頼者:「ありがとう、助かるよ。」
ステップ4:報連相後のフォローアップ
担当者に引き継いだり、相手に返答したりして終わりではありません。必要に応じて、その後の状況を把握し、適切にフォローアップを行います。
- 担当者が対応したかの確認: 特に急ぎの用件だった場合など、担当者が対応に取りかかったか、状況はどうかなどを、担当者本人やその上司に確認します。ただし、相手の忙しさも考慮し、適切なタイミングで行います。
- 相手からの返信への対応: 自分が仲介して担当者に繋いだ相手から、その後連絡があった場合、自分で対応できる内容か、再び担当者へ繋ぐべきか判断し、適切に対応します。
よくある疑問・間違い
疑問1:「担当外なので分かりません」と正直に答えても良いか?
「担当外なので分かりません」と伝えること自体は問題ありません。しかし、それだけで会話を終えてしまうと、相手は次にどうすれば良いか分からず困ってしまいます。
正しい対応: 「担当外なので分かりかねます」と伝えた上で、「恐れ入ります、〇〇については担当の△△にお繋ぎいたします」「担当の△△が本日不在のため、明日改めて△△よりご連絡いたします」など、次に誰が、どのように対応するかを具体的に示すことが重要です。
疑問2:誰が担当者か分からない場合はどうすれば良いか?
部署が細分化されている場合や、特定のプロジェクトに関する質問の場合など、誰が担当者かすぐに分からないこともあります。
正しい対応: まずは、最も関係が近そうな先輩や上司に相談します。「恐れ入ります、先ほど〇〇様から△△の件でお問い合わせをいただいたのですが、この件の担当者がどちら様か分からず、教えていただけますでしょうか」のように尋ねます。担当者が分かったら、その人に引き継ぎます。
疑問3:簡単なことなら自分で対応してしまっても良いか?
簡単な質問への回答や資料渡しなど、自分で対応できそうに思える場合でも、安易に自己判断で対応するのは避けるべきです。特に社外の人への対応では、誤った情報を伝えてしまったり、組織としての正式な見解と異なることを言ってしまったりするリスクがあります。
正しい対応: 依頼された内容が「簡単なこと」に見えても、まずはその件の担当者や上司に「この件について、私が△△のように対応してもよろしいでしょうか」と確認を取ることをお勧めします。確認の上で「良い」と言われたら、自信を持って対応しましょう。
まとめ
自分が担当していないことに関する報連相は、新社会人にとって迷いやすい状況の一つですが、これは決して特別なことではありません。情報伝達のハブとして、関係者をつなぐ重要な役割を果たす機会と捉えましょう。
今回ご紹介した「状況の正確な把握」「対応方針の判断」「関係者への報連相」「報連相後のフォローアップ」という4つのステップと、具体的な会話例を参考にすることで、自信を持って対応できるようになるはずです。
安易な自己判断や放置は避け、分からないことや判断に迷うことがあれば、必ず担当者や上司に確認・相談することを習慣にしてください。適切な報連相は、あなた自身の信頼を高め、組織全体の円滑なコミュニケーションに貢献することにつながります。